らないが)となるわけである。そうしてまた、その舞い、歌い、囃子の中でも、最もノンセンスなものが「能」なのだからトテモやり切れない。
こうして人類の文化は漸次「生活」から「能」へと進化高潮しつつある。現代のスポーツ流行はそうした進化の一階段に過ぎないので、喜多実氏がテニスのスタイルを能の中に体現し、松野奏風氏が素早くこれをスケッチしたのも、決して偶然の事ではない。吾が喜多流の根本精神が、かような進化の道程と合致している好例証である。将来の喜多流万々歳の瑞兆に外ならぬのである。
「生活+《プラス》戦争+《プラス》スポーツ÷0=能」の意味がわかったかナ?……ウン、わかった。……諸君なかなか頭がいい……。
ナニ、わからない。+……+……ナルホド。……÷0=能の「0」はそもそも何じゃと言うのだね。アハハハハこれは説明せん方がよかろう。テンテレツク天狗の面……だからな……。
……どうも弱ったな。そんなにわかりたければ、喜多実君か松野奏風君にきいてみるさ。両君はその「0」を掴むべく夢中になって御座るようだから……。
……オット……断っておくが、それは「金」の事じゃないよ。ハハハハ。
底本:「夢野久作全集7」三一書房
1970(昭和45)年1月31日第1版第1刷発行
1992(平成4)年2月29日第1版第12刷発行
初出:「喜多」
1928(昭和3)年3月
※底本では、ファイル本文の冒頭に置いた図が、表題として扱われています。
※冒頭の図版の太線素片は、底本では点線です。
※底本の解題によれば、初出時の署名は「※[#「やまいだれ+惡」、第3水準1−88−58]見鈍太郎」です。
入力:川山隆
校正:土屋隆
2007年7月21日作成
青空文庫作成ファイル:
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