ところへやってきた。つまずいて倒れるときまでに五十二歩を数え、また歩きはじめてからさらに四十八歩を数えて――そのときに布片のところへ着いたのであった。してみると全体で百歩あることになる。そして二歩を一ヤードとして私はこの牢獄の周囲を五十ヤードと推定した。しかし壁のところで多くの角に出会ったので、この窖《あなぐら》――窖であろうということは想像しないわけにはゆかなかった――の形状を推測することはできなかった。
このような調査には私はほとんど目的を――たしかに希望などは少しも――持っていなかった。けれども漠然とした好奇心が私を駆ってその調査をつづけさせた。私は壁のところを離れて、この構内の地域を横断してみようと決心した。初めは非常に用心しながら進んだ。床は固い物質でできているらしかったが、ねばねばしていて油断がならなかったからだ。しかしとうとう勇気を出して、ためらわずにしっかりと足を踏み出した、――できるだけ一直線によぎろうと努めながら。こんなふうにして十歩か十二歩ばかり進んだときに、さっきひき裂いた着物のへりの残片が両足のあいだに絡まった。私はそれを踏みつけて、ばったりと俯向《うつむ》
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