くらいの興奮した様子を見せたりしていた。「遠眼鏡屋」で黒犬を見てから私の例の疑念はすっかり再び呼び覚されていたので、私はその料理番《コック》をよく気をつけて注視していた。しかし、彼は私などにわかるには余りに心が深く、余りに悟り早く、余りに利口だった。そして、さっきの二人の男が息を切らして戻って来て、追っかけて行った奴を人込みの中で見失ってしまったと言って、まるで泥棒などのように呶鳴《どな》りつけられている頃には、私はのっぽのジョン・シルヴァーの潔白なことを請合ってもいいくらいの気特になっていたのであった。
「ねえ、ホーキンズ、」と彼は言った。「俺《わし》のような人間にもこんな情ねえ辛《つれ》えことがあるんだ。わしなあ、そうじゃねえかい? トゥリローニー船長がねえ、――あの方《かた》はどう思いなさるかなあ? いめいめしいあん畜生めが、俺の家《うち》に坐りこんで、俺んとこのラムを飲んでやがったなんて! そこへ君がやって来て、そいつをはっきり言ってくれたのだ。それだのに俺は、このいまいましい眼の前で、みすみす奴を逃がしちまったんだ! で、ホーキンズ、君は船長さんと一緒に俺を公平に判断しておく
前へ
次へ
全412ページ中91ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 直次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング