だ。「わっしの店にそんな奴が! ベン、お前《めえ》走ってってハリーに加勢してくれ。あの馬鹿どもの一人だったのか、奴が? モーガン、奴と飲んでたのはお前だったな? ここまでやって来い。」
 モーガンと呼ばれた男――年寄の、白髪の、マホガニー色の顔をした水夫――は、噛煙草《かみたばこ》をもぐもぐやりながら、大分おずおずして出て来た。
「ところで、モーガン、」とのっぽのジョンはすこぶる厳《いかめ》しく言った。「お前はあの黒《ブラック》――黒犬《ブラック・ドッグ》を前に一度も見たことがねえな、え、そうだろ?」
「ねえんですよ。」とモーガンは言って、お辞儀をした。
「お前は奴の名前《なめえ》を知らなかったんだな、そうだろ?」
「そうですよ。」
「よし、トム・モーガン、そいつぁお前のためにゃ結構なこった!」と亭主は大声で言った。
「もしあんなような奴とつきあってたんなら、二度と己《おれ》の家《うち》へ足を入れさすんじゃなかったぞ。そいつぁ間違《まちげ》えっこなしだ。で、奴あお前に何と言ってたい?」
「おいらはほんとに知らねえんですよ。」とモーガンは答えた。
「お前の肩の上にのっかってるのは、そりゃ
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