は書かない罵り言葉と共に、「ラムを船尾へ持って来おい、ダービー!」と言った。
 海賊どもは地面に根が生えたように立ち竦み、眼玉が顔から跳び出そうであった。その声が消えてしまって永くたっても、彼等はなおも無言のまま恐しそうに前を見つめていた。
「もう確かだぜ!」と一人が喘ぐように言った。「帰《けえ》ろうよ。」
「あれぁあの人の死ぬ時の言葉だった。」とモーガンが呻くように言った。「あの人がこの世で一番おしめえに言った言葉だ。」
 ディックは自分の聖書を取り出して、ぺらぺらと祈祷した。彼は、船乗になって悪い仲間に入る前には、よい育ちであったのだ。
 それでも、シルヴァーは参らなかった。歯をがちがち鳴らしているのが私には聞えたが、しかし彼はまだ降参していなかった。
「この島にゃダービーのことを聞いた奴はだれもいねえはずだ。ここにいる己たちの他《ほか》には一人だっていねえはずだが。」と彼は呟いた。それから、強いて元気を出して、「兄弟、」と叫んだ。「己はあの金を取りにここへ来たんだ。人間にだって悪魔にだって負けやしねえぞ。フリントが生きてる時だって己は奴がちっとも怖《こわ》かなかったんだ。死んでるあいつなんか怖《こえ》えもんか。ここから四分の一マイルとねえ処に七十万ポンドって金があるんだ。青っ面《つら》をした大酒飲みの老いぼれ海員《けえいん》の――それも死んでる奴が怖えってって、そういう大金《てえきん》に尻《けつ》を見せて逃げるなんて分限紳士が、どこの世界にあるけえ?」
 しかし彼の手下の者たちが元気を盛り返す様子は一向になかった。実際、むしろ、彼の言葉が死者に対して不遜なのにますます恐しがるようだった。
「止《や》めろよ、ジョン!」とメリーが言った。「幽霊に逆うなよ。」
 その他の者たちに至っては皆すっかり恐しがって返事をすることも出来なかった。彼等はそれだけの勇気があったならてんでに逃げ出したことであろう。だが恐怖のために彼等は互に寄り合い、ジョンの大胆さが自分たちを助けてくれるかのように、彼のすぐ近くにいた。彼の方は、自分の弱気をかなりに抑えつけていた。
「幽霊だと? うむ、そうかも知れねえ。」と彼は言った。「だが、己には腑に落ちねえことが一つある。山彦《やまびこ》がしたな。ところで、影のある幽霊なんてだれも見たことがねえ。とすればだ、幽霊に山彦なんかあってどうするものか
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