《ケビン》の人たちが私の脱走を怒っているというシルヴァーの言葉の真実であることを幾分か信じたけれども、自分の聞いたことのために、悲しむよりは、むしろほっとした。
「お前が己たちに掴まってるってことは己は何も言わねえ。」とシルヴァーが言い続けた。「ほんとはそうなんだがね、間違えなしにな。己ぁ万事相談づくでやる人間だ。嚇《おど》していいことになったってこたぁ己ぁ一度も知らねえ。もしお前が働いてくれる気ならだ、なあ、こっちへつくがいい。もし厭ならばだ、ジム、そうさ、自由に厭だって返事するんだ。――自由で結構さ、兄弟《きゃうでえ》。で、どんな海員だってこれより公平なことが言える者がいるなら、お目にかかりてえや!」
「それじゃあ、僕は返事をしなきゃいけないのかい?」と私はひどく震えた声で尋ねた。彼のこの鼻であしらうような話の全体にわたって、私は自分に迫りかかっている死の威嚇を感じさせられ、頬はほてり心臓は胸の中で苦しいほど動悸うった。
「なあ、おい、」とシルヴァーは言った。「だれもお前に無理強いはしねえ。篤《とく》と考《かんげ》えろよ。己たちぁ一人だってお前をせき立てはしねえつもりだ、兄弟。お前と一緒にいると愉快で時のたつのがわからねえくれえだからなあ。」
「ではね、」と私は少し大胆になって言った。「もし僕がどちらかにきめなきゃならないんなら、僕は、ほんとうのことや、あんた方《がた》がどうしてここにいるのか、僕の方の人たちがどこにいるのかってことを、知らして貰う権利がある訳だねえ。」
「ほんとのとこだと!」と海賊の一人が太い唸り声で私の言葉を繰返して言った。「ふん、そいつがわかった奴は仕合せ者だろうて!」
「おい、お前に話しかけられるまではお前は黙って控えてるがいいんだ。」とシルヴァーはその男に向って荒々しく呶鳴《どな》った。それから、元の優しい口調で、私に答えた。「昨日《きのう》の朝のことだ、ホーキンズ君、折半直(註七六)に、リヴジーさんが休戦旗を持ってやって来たんさ。『シルヴァー船長、お前は裏切られたんだ。船は行っちまったぞ。』ってお医者は言うのだ。そうさな、多分己たちは酒を飲んで、盃を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]す景気づけに唄でも歌っていたんだろう。そうじゃねえとは言わねえ。ともかくだれ一人気をつけていた者はなかったんだ。で、外を見ると、驚いたな! あの古
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