だが、その商売が何であるか、またその商売がこの物語にいかなる関係を持つことになるかは、ずっと後の第二巻第十四章と第三巻第八章とに至ってようやく判明するのである。ロリーの馬車の中での夢と現実との交錯は、はなはだ小説的に巧みに書かれている。心に重くかかる何かの用件を持って一晩夜汽車に乗ったことのある読者は、このロリー氏と幾らか似たような経験を持つであろう。彼の夢に浮ぶのは、彼の勤務先の銀行と共に、年齢四十五歳の男の物凄く瘠せ衰えた顔。その男との想像上の対話。それから空想の裡でその男を頻りに掘り出し、その男がようやく出て来ると、たちまち倒れて塵になる。そういう陰惨な夢と、その夢から覚めて見る窓外の紅葉黄葉の疎林と美しく昇る朝暾とは、対照の妙を得て効果的である。

第四章 準備  その日の午前に駅逓馬車の著いたドーヴァーの旅館。それまでぼってりと身に纒っていたものを脱いで正装して食堂へ入るロリー氏。六十歳の独身の紳士、テルソン銀行員。この物語において最初に登場し、最後まで副人物的な役割を勤めるこの一主要人物は、この旅館の食堂で肖像画を描かせるために著席しているかのように静かに腰掛けている間に、
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