何か隠立《かくしだ》てしているようなところがあったし、彼は今の言葉に何となく不可思議な意味を含ませたので、それが彼の甥の眼と耳とに強く響いた。同時に、あの眼の縁《ふち》の細い真直な線と、細い真直な脣と、鼻の凹みとが、見事に悪魔的に見える皮肉さを見せて歪《ゆが》んだ。
「なるほど。」と侯爵は繰返して言った。「娘と一緒の医者か。なるほど。そこで新しい哲学が始るという訳じゃな! お前は疲れているじゃろう。じゃ、おやすみ!」
 彼のその顔に向って質問することは、館の外の石造の顔に向って質問するのと同様な効能しかなかったろう。甥は扉《ドア》の方へ歩いてゆきながら彼をじっと見たが、何の得るところもなかった。
「おやすみ!」と叔父が言った。「わしは明日《あす》の朝またお前に逢いたいと思うておるよ。ゆっくりおやすみ! わしの甥どのをあちらの部屋へ明りをつけて御案内せい! ――それから、したければ、その甥どのを寝床の中で焼き殺しても構わんぞ。」と彼はこの最後の文句を心の中で附け加え、それから、小さな呼鈴《ベル》をもう一度鳴らして、側仕を自分の寝室へ呼んだ。
 側仕は来てやがて引下り、侯爵閣下は、その暑い
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