、同時代の他の大きな営業所と同様に、非常に多くの人命を奪ったものである。だから、もしその銀行の前で打ち落された首が、こっそりと始末されないで、テムプル関門《バー》の上にずらりと並べられていたならば、その首は、おそらく、銀行の一階が受けているわずかばかりの明りをかなりはなはだしく遮ったことであろう。
 テルソン銀行のさまざまの薄暗い食器戸棚や兎小屋のようなところに押しこめられて、この上もなく年をとった人たちがいかにも真面目《まじめ》に事務を執っていた。彼等は青年をテルソン銀行ロンドン商社に採用した時には、その青年が老年になるまで彼をどこかに隠しておく。彼等は彼を乾酪《チーズ》のように暗い場所に貯蔵しておくのだ。するとしまいに彼は十分にテルソン風の風味と青黴★とを帯びて来るのである。そうなってようやく、彼は、人目に立つように大きな帳簿を調べたり、自分のズボンとゲートルとを銀行の全体の重みに加えたりして、人目に触れることを許されるのであった。
 テルソン銀行の戸外に――呼び入れられる時でなければどうあっても決して入ることのない――時には門番になり時には走使《はしりづか》いになる、雑役夫が一人
前へ 次へ
全341ページ中124ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐々木 直次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング