い、とあたくしは思いますわ。」
「それあそうですよ。」と、見たり聞いたりするのに跪いていたドファルジュは、言った。「そればかりじゃありません。ムシュー・マネットは、あらゆる理由から、フランスを去られる方が一番いいんです。じゃあ、わっしは馬車と駅馬を雇って来ましょうか?」
「それは事務ですな。」とロリー氏は、すぐさま彼の几帳面な態度に返りながら、言った。「事務をやらねばならんのでしたら、わたしがやる方がいいでしょう。」
「では、どうぞあたくしたち二人をここに残しておいて下さいまし。」とマネット嬢は言い張った。「御覧の通り父はこんなに落著いて参りましたから、もう父をあたくしと一緒に残してお出でになりましても御心配はございません。どうして御心配なことなどございましょう? 誰も入って来ませんように扉《ドア》に錠を下して下さいますなら、きっと、父は、あなた方がお戻りになります時には、お出かけの時と同じように穏かにしておりますでしょうよ。何にしましても、あなた方がお帰りになりますまであたくしは父を預りましょう。そしてお帰りになりましたらあたくしたちは早速父を連れ出すことにいたしましょう。」
ロリ
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