予想が記され、時代はフランス革命の前後数十年間にわたっているが、この作の姿なき主人公はフランス革命であるとも言い得る。この物語によって読者は絵画的に具象化されたかの革命とその時代とについて歴史書以外の知識と感銘とを得るであろう。その意味で、この小説は、人類の歴史が過去に有した最大の動乱の時代の一であるフランス革命の時代に興味と関心とを有する人々にも読まれるに価するものである。
訳者の他のすべての飜訳におけると同様に、訳文中に傍点[#「傍点」に傍点]を附してある箇処は、原文においてだいたい強調の意味をもって斜体活字《イタリック》で印刷されている箇処であり、訳文中圏点[#「圏点」に丸傍点]を附してある語は、同じく原文に強調の意味をもって頭文字のみで記されている語である。ダッシュ、句読点、その他については、絶えず数種の底本を対照して適当と考えるところに拠る。
星標★を附した箇処の語句には巻末に註を附して、主として作品の細部または細部の語句をも正確に理解するに必要なことを記したが、各読者が単にその必要に応じて参照さるべきである。
同じく巻末に附した解説は、もし読まれるならば、原作の後に読まれることを希望したい。
一九三六年八月[#地から3字上げ]佐々木直次郎
[#改丁]
目次
序(訳者)
緒言
第一巻 甦る
第一章 時代
第二章 駅逓馬車
第三章 夜の影
第四章 準備
第五章 酒店
第六章 靴造り
第二巻 黄金の糸
第一章 五年後
第二章 観物
第三章 当外れ
第四章 祝い
第五章 豺
第六章 何百の人々
第七章 都会における貴族
第八章 田舎における貴族
第九章 ゴルゴンの首
註(訳者)
解説(訳者)
[#改丁]
二都物語
[#改丁]
緒言
私が自分の子供たちや友人たちと共にウィルキー・コリンズ氏の劇の「凍れる海」を演じていた時に、私は初めてこの物語の主要な観念を思い付いたのである★。その観念を自分自身で具体化してみたいという強い欲望が、その時私に起った。それで私は自分の空想の裡《うち》で特別の注意と感興とをもってそれを追究したが、空想裡ではそれは烱眼な観客に対しての上演を必要ならしめたのであった。
その観念が私の心に親しくなって来るにつれて、それは次第次第にそれの現在
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