努力もない。次に長い間をおいてから、耳鳴りがする。それからもっと長い時間がたってから、手足のひりひり痛む感覚。次には楽しい静寂の果てしのないように思われる時間、そのあいだに目覚めかかる感情が思考力のなかへ入ろうともがく。次にまたしばらくのあいだ虚無のなかへ沈む。それからとつぜんの回復。やっと眼瞼《まぶた》がかすかに震え、たちまちぼんやりとはげしい恐怖のショックが電気のように走り、血が顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》から心臓へどきどきと流れる。そして初めて考えようとするはっきりした努力。それから初めて思い起そうとする努力。部分的の束《つか》の間《ま》の成功。それから記憶がいくらかその領域を回復して、ある程度まで自分の状態がわかる。自分が普通の眠りから覚めたのではないのを感ずる。類癇にかかっていたことを思い出す。そしてとうとう、まるで大海が押しよせてくるように、私のおののいている魂はあの無慈悲なおそれに圧倒される、――あのもの凄い、いつも私の心を占めている考えに。
この想像に捉えられたのち数分間、私はじっとして動かずにいた。なぜか? 動くだけの勇気を奮い起すことがで
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