宝石をちりばめ、高価な革に入っていた。この箱の全内容を、その夜、我々は百五十万ドルと見積った。ところが、その後、その装身具や宝石類を(いくつかは我々自身が使うのに取っておいたが)売り払ってみると、我々がこの財宝をよほど安く値ぶみしていたことがわかったのだった。
いよいよ調べが終って、はげしい興奮がいくらか鎮《しず》まると、ルグランは、私がこの不思議きわまる謎《なぞ》の説明を聞きたくてたまらないでいるのを見て、それに関するいっさいの事情を詳しく話しはじめたのだ。
「君は覚えているだろう」と彼は言った。「僕が甲虫《かぶとむし》の略図を描《か》いて君に渡したあの晩のことを。また、君が僕の描いた絵を髑髏《どくろ》に似ていると言い張ったのに僕がすっかり腹を立てたことも、思い出せるだろう。初め君がそう言ったときには、僕は君が冗談を言っているのだと思ったものだ。だがその後、あの虫の背中に妙な点があるのを思い浮べて、君の言ったことにも少しは事実の根拠がないでもないと内心認めるようになった。でも、君が僕の絵の腕前を冷やかしたのが癪《しゃく》だった。――僕は絵が上手だと言われているんだからね。――だから
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