め、鋲《びょう》を打ってあって、全体に一種の格子《こうし》細工をなしている。箱の両側の、上部に近いところに、鉄の鐶が三つずつ――みんなで六つ――あり、それによって六人でしっかり持つことができるようになっている。我々が一緒になってあらんかぎりの力を出してみたが、底をほんの少しばかりずらすことができただけであった。こんな恐ろしく重いものはとうてい動かせないということがすぐにわかった。ありがたいことには、蓋《ふた》を留めてあるのは二本の抜き差しのできる閂《かんぬき》だけだった。不安のあまりぶるぶる震え、息をはずませながら――我々はその閂を引き抜いた。とたちまち、価《あたい》も知れぬほどの財宝が我々の眼前に光りきらめいて現われた。角灯の光が穴のなかへ射《さ》したとき、雑然として積み重なっている黄金宝石の山から、実に燦爛《さんらん》たる光輝が照りかえして、まったく我々の眼を眩《くら》ませたのであった。
 それを眺めたときの心持を私は書きしるそうとはしまい。驚きが主だったことは言うまでもない。ルグランは興奮のあまりへとへとになっているようで、ほとんど口もきかなかった。ジュピターの顔はちょっとのあい
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