った」に傍点]所がいずこにあったか? 不可解な彼の暴虐《ぼうぎゃく》から、私はとうとう戦々|兢々《きょうきょう》として疫病《えきびょう》から逃げるように逃げた。そして地球のはてまでも私はむなしく逃げまわった[#「私はむなしく逃げまわった」に傍点]。
 再三再四、私はそっとわが心に問うた、「彼は何者であるか? ――彼はどこから来たのか? ――また彼の目的はなんであるか?」と。しかし答えは一つも得られなかった。それから今度は、彼のあつかましい監督の形式と、方法と、主要な特徴とを、細かな詮索をして吟味してみた。けれどもそこにすら推量の基礎となるべきものはほとんどなかった。実際、気のつくことは、彼が最近私の邪魔をした多くの場合のすべてが、もしそれがほんとに実行されたなら忌《い》むべき害を生じたであろう計画や行為に限られていたのだ。だが、これは、あんなに横柄《おうへい》に揮った権力にたいするなんという貧弱ないいわけであろう! 自由行動という生得の権利をあんなに執拗《しつよう》に、あんなに無礼に否定されたことにたいするなんという貧弱な損害賠償であろう!
 私はまた、自分の迫害者が、非常に長いあいだ
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