のポケットのなかにあるはずのいくつかの小さな包みとを、ごゆっくりお調べください」
彼がしゃべっているあいだは、床の上へ針が一本落ちても聞えそうなほど、ひっそりと鎮まりかえっていた。言いおわると、彼はすぐに、また入って来たときのように突如として、行ってしまった。そのときの自分の感じを私は書くことができるだろうか――書かねばならぬだろうか? 私は地獄に落ちた者のあらゆる恐怖を感じたなどと言わねばならないだろうか? たしかに私には考えている暇はほとんどなかった。たくさんの手がすぐに私を乱暴にひっつかみ、明りはまたすぐに持って来られた。つづいて捜索が行われた。私の袖の裏から、エカルテにもっとも肝心なあらゆる絵札が発見され、ラッパーのポケットからは、たくさんの骨牌札が発見された。これは私たちの勝負に使った札とそっくりのもので、ただ一つ違っているのは、私のはその道の言葉で言えばアロンデ(11[#「11」は縦中横])という種類のものだった。すなわち、最高札《オナアズ》は上下の縁が少しばかり凸形《とつがた》になっているし、並の札は両横の縁が少しばかり凸形になっているのである。こんなぐあいになっている
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