る隣室で、
「おい、おい。」と寝惚《ねぼ》けた声をして、一人を起こし出した。
「地震だ、地震だ。」と早口に言うと、[#「言うと、」は底本では「言うと。」]俄かに二人とも起き上って、カタカタ言わせ出した。そして、見ていると、両手に一杯荷物を提げながら、寒そうに身をかがめてしょぼしょぼと、私の室の前を通って行った。
 その時は、地震はすでにおさまっていた。
 私達は四人で、何と言うことはなしに、その姿を見て手を拍《う》って笑った。
[#地から1字上げ](四十二年四月作)



底本:「遠野へ」葉舟会
   1987(昭和62)年4月25日発行
入力:林 幸雄
校正:今井忠夫
2004年2月19日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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