《めまい》に圧倒されてしまったのだ。また私は、心が不自然なほど静かだったので、漠然とした恐怖を感じたのだ。次にはすべてのものがみな急に動かなくなったという知覚がきた。まるで私を運んでいる者たち(恐ろしい一行!)が下降しながらとっくに限りないものの限界をも越えてしまって、彼らの労苦に疲れはてた歩みをとどめたかのように。そののちに思い起すのは平坦と湿気との感じである。それからはすべてが狂乱[#「狂乱」に傍点]――考えることを許されないいまわしいもののあいだを忙しくとびまわる記憶の狂乱である。
まったくとつぜんに、私の魂に運動と音とが――心臓のはげしい運動と、耳に響くその鼓動の音とが、戻ってきた。それからいっさいが空白である合間。やがてまた音と、運動と、触覚――体じゅうにしみわたるぴりぴり疼《うず》く感覚。次に思考力を伴わない単なる生存の意識、――この状態は長くつづいた。それからまったくとつぜんに、思考力[#「思考力」に傍点]と、戦慄するような恐怖感と、自分のほんとうの状態を知りつくそうとする熱心な努力。つぎには無感覚になってしまいたいという強烈な願望。それから魂の急速なよみがえりと、動
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