に済まぬと云ふ人があるかも知れない。併し人が読みさして読まずにしまふのも、原作者のために愉快ではあるまい。一体「病院横町の殺人犯」は世界に名高いポオの世界に名高い小説だが、今の読者には向かぬかも知れない。近頃こつちではこんな小説を高等探偵小説と名付けることになつてゐる。高等探偵小説だの高等講談だのと名を附けて、こつちの批評家は流行以外の作を侮辱する権利を有してゐるのださうだ。して見ると、読者に読んで貰ふのも、矢張原作者を侮辱するに当るかも知れない。若しさうなら、訳者は謹んで原作者に謝罪することとしよう。
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底本:「鴎外選集 第15巻」岩波書店
   1980(昭和55)年1月22日第1刷発行
初出:「新小説 一八ノ六」
   1913(大正2)年6月1日
入力:tatsuki
校正:土屋隆
2009年1月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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