]な手段をとったにちがいない、ということを悟ったのだよ。君は、我々が最初に総監と会ったとき、この事件がそんなに彼を悩ませるのは、それがきわめて[#「きわめて」に傍点]わかりきっているためかもしれんと僕が言ったら、総監がやけに笑いこけたことを、たぶん覚えているだろう」
「うん、たいへんなご機嫌だったことをよく覚えているよ。あんまり笑うので、ひきつけやしないかと僕はほんとうに思ったものだ」と私は言った。
「物質界には」とデュパンは語をつづけた。「非物質界と非常によく類似したことがたくさんある。だから、隠喩《いんゆ》やあるいは直喩が叙述を修飾するとともに、議論を強めることができるという修辞上の独断が、いくらか真理らしく見えるのだ。たとえば惰性力《ウィース・イネルティアエ》の法則は物理学でも形而上《けいじじょう》学でも同一であるらしい。物理学で、大きい物体を動かすのは小さい物体を動かすよりも困難で、それに伴う運動量《モーメントゥム》はその困難に比例するものであるが、これは形而上学で、能力の大きい知能は劣等な知能よりもその動作において力があり、堅実であり、重大な結果を生ずるけれども、またそれより
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