喧嘩《けんか》してるんだね。だが、まあ話をつづけたまえ」
「僕は、絶対的に論理的な形式以外の、あらゆる特殊の形式でなされる推理の効力に、したがってまたその価値に、反対する。とりわけ、数学的の研究によって引き出された推理に、反対する。数学は形式と数量との科学であって、数学的の推論は形式と数量との観察に適用された論理にすぎない。純粋[#「純粋」に傍点]代数学と言われているものの真理でさえ、それが絶対的の、普遍的の、真理であると想像するところに、大きな誤謬があるんだよ。そしてこの誤謬は実にひどいものなので、それが広く一般に信ぜられているのには僕もびっくりするね。数学の公理は普遍的な真理の公理ではない[#「ない」に傍点]のだ。関係[#「関係」に傍点]――形式と数量との関係――について真であることも、たとえば倫理学などに関しては、しばしば非常にまちがったものであることがある。倫理学では、部分の総和は全体に等しいということはたいがい真ではない[#「ない」に傍点]。化学においてもやはりその公理は駄目だ。動機の考究にしたってもそうだよ。なぜかと言えば、ある与えられた価値を持つ二つの動機は、それを合わせ
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