《いんとく》の場所はわかるはずがないと思って、私はちっともどぎまぎしなかった。警官は私に彼らの捜索について来いと命じた。彼らはすみずみまでも残るくまなく捜した。とうとう、三度目か四度目に穴蔵へ降りて行った。私は体の筋一つ動かさなかった。私の心臓は罪もなくて眠っている人の心臓のように穏やかに鼓動していた。私は穴蔵を端から端へと歩いた。腕を胸の上で組み、あちこち悠々《ゆうゆう》と歩きまわった。警官はすっかり満足して、引き揚げようとした。私の心の歓喜は抑えきれないくらい強かった。私は、凱歌《がいか》のつもりでたった一言でも言ってやり、また自分の潔白を彼らに確かな上にも確かにしてやりたくてたまらなかった。
「皆さん」と、とうとう私は、一行が階投をのぼりかけたときに、言った。「お疑いが晴れたことをわたしは嬉《うれ》しく思います。皆さん方のご健康を祈り、それからも少し礼儀を重んぜられんことを望みます。ときに、皆さん、これは――これはなかなかよくできている家ですぜ」〔なにかをすらすら言いたいはげしい欲望を感じて、私は自分の口にしていることがほとんどわからなかった〕――「すてきに[#「すてきに」に傍点
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