い徽章《きしょう》で自分の金を取りもどすことに、詩的調和といったようなものを感じたんだぜ」
「あるいはそうかもしれん。だが僕は、常識ということが、詩的調和ということとまったく同じくらい、このことに関係があると考えずにはいられないんだ。あの『悪魔の腰掛け』から見えるためには、その物は、もし小さい物なら、どうしても白く[#「白く」に傍点]なくちゃならん。ところで、どんな天候にさらされても、その白さを保ち、さらにその白さを増しもするものとしては、人間の頭蓋骨にかなうものはないからな(19)」
「しかし君の大げさなものの言いぶりや、甲虫《かぶとむし》を振りまわす振舞いといったら――そりゃあ実に奇妙きてれつだったぜ! 僕はてっきり君が気が狂ったのだと思ったよ。で、君はなぜあの頭蓋骨から、弾丸ではなくて、虫を、落させようと言い張ったんだい?」
「いや、実を言うと、君が明らかに僕の正気を疑っているのが少し癪《しゃく》だったので、僕一流のやり方で、真面目《まじめ》にちょっとばかり煙《けむ》に巻いて、君をこっそり懲《こ》らしてやろうと思ったのさ。甲虫を振りまわしたのもそのためだし、あれを木から落させたの
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