ぐあいに話していいか、あるいはまた話すべきかどうかも、わかり兼ねるのだ。
 僕はこの数日来あまりぐあいがよくなかったが、ジャップめは好意のおせっかいからまるで耐えがたいくらいに僕を悩ませる。君は信じてくれるだろうか? ――彼は先日、大きな棒を用意して、そいつで、僕が彼をまいて一人で本土の山中にその日を過したのを懲《こ》らそうとするのだ。僕が病気のような顔つきをしていたばかりにその折檻をまぬかれたのだと、僕はほんとうに信じている。
 この前お目にかかって以来、僕の標本棚《ひょうほんだな》にはなんら加うるところがない。
 もしなんとかご都合がついたら、ジュピターと同道にて来てくれたまえ。ぜひ[#「ぜひ」に傍点]来てくれたまえ。重大な用件について、今晩[#「今晩」に傍点]お目にかかりたい。もっとも[#「もっとも」に傍点]重大な用件であることを断言する。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から5字上げ]敬具
[#地から2字上げ]ウィリアム・ルグラン」

 この手紙の調子にはどこか私に非常な不安を与えるものがあった。全体の書きぶりがいつものルグランのとはよほど違っている。いったい彼はなにを夢想して
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