を暗示したかったのだ。今度は部屋のなかへ戻ってみよう。そこの有様を調べてみようじゃないか。箪笥《たんす》の引出しは、たくさんの衣類がなかに残ってはいるが、かすめ取られていたとのことだね。この断定はおかしい。これは単なる推測だ、――まったくばかげた推測だ、――それ以上のものじゃない。そのとき引出しのなかに入っていたものが初めから引出しのなかにあったものの全部ではないということが、どうしてわかるか? レスパネエ夫人とその娘とはごくひっそりと生活をしていた。――客もなかったし、――めったに出かけなかったし、――たくさんの着替えの衣装もいらなかった。あのなかにあったものは、この女たちの持っていそうなもののなかではいちばん上等な質《たち》のものだった。もし泥坊がなにかを取って行ったとしたならなぜいちばんいいのを取って行かなかったか――なぜみんな取って行かなかったか? 要するに、なぜひとかかえの衣類なんぞに手を出して、四千フランの金貨を残しておいて行ったか? 金貨は残しておいてあった[#「あった」に傍点]んだぜ。銀行家のミニョー氏の言ったほとんど全額が、袋に入ったまま床の上にあったんだぜ。だから、
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