と同じ性質のものだった。今度は釘を見た。それは前のと同じく丈夫なもので、見たところ、同じようなぐあいに――ほとんど頭のところまで――打ちこんであった。
 僕が途方に暮れたろうと、君は言うだろう。が、もしそう考えるなら、君は帰納的推理ということの性質を誤解しているにちがいない。猟の言葉を用いて言うなら、僕は一度も『嗅《か》ぎそこない』はしなかったのだ。臭跡《においあと》がちょっとの間も失わなかったんだ。鎖の環《わ》は一つも切れていないのだぜ。僕はこの秘密をとことんの結果までたどって行った。――そしてその結果というのは、その釘[#「その釘」に傍点]なのだ。それは実際あらゆる点で第一の窓にあるのと同じ様子をしていた。が、この事実なんぞは、(決定的なものに見えるかもしれないが)ここで、この点で、手がかりが終っているという事情と比べればぜんぜん無力なものだよ。『釘になにか変ったことがあるにちがいない[#「ちがいない」に傍点]』と僕は言った。僕はそれにさわってみた。すると、その頭のほうが、四分の一インチほどの釘身《ていしん》がついたまま、ぼろりと取れて僕の指に残った。釘身の残りは錐穴のなかにあって
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