ッられ変色していた。この傷害がどうして加えられたかはわからない。木製の重い棍棒《こんぼう》、あるいは鉄製の広い棒――椅子――なにか大きな、重い、鈍い形の凶器を、もし非常な大力の男の手で使ったなら、このような結果が起きたかもしれない。女ではどんな凶器を用いてもこういう危害を加えることはできない。被害者の頭部は、証人の見たときには、すっかり胴から離れて、これもひどく砕かれていた。咽喉は明らかに、なにかたいへん鋭利な刃物で――たぶん剃刀で――切られていた。
外科医、アレクサンドル・エティエンヌは死体を検視するためにデュマ氏とともに呼ばれた。デュマ氏の証言と鑑定を確証する。
そのほか数名の者が調べられたが、以上のほかに重要なことはなにも得られなかった。すべての点でこんな不思議な、こんな不可解な殺人事件――まあかりに、ほんとの殺人が行われたものとしてだが――はパリではいままで行われたことがなかった。警察はまったく途方に暮れている。――この種の事件では珍しい出来事である。しかも手がかりらしいものの影もない」
同紙の夕刊は、サン・ロック区ではまだ大騒ぎがつづいていること、――犯罪の行われた家
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