一つ一つ消えて、不思議な泡の縞《しま》がいままでなにもなかったところにあらわれるようになったのだ。この縞はしまいにはずっと遠くの方までひろがってゆき、互いに結びあって、いったん鎮《しず》まった渦巻の旋回運動をふたたび始め、さらに巨大な渦巻の萌芽《ほうが》を形づくろうとしているようであった。とつぜん――まったくとつぜんに――これがはっきり定まった形をとり、直径一マイル以上もある円をなした。その渦巻の縁は、白く光っている飛沫《しぶき》の幅の広い帯となっている。しかしその飛沫の一滴さえもこの恐ろしい漏斗《じょうご》の口のなかへ落ちこまない。その漏斗の内側は、眼のとどくかぎり、なめらかな、きらきら輝いている黒玉《こくぎょく》のように黒い水の壁であって、水平線にたいして約四十五度の角度で傾斜し、揺らぎながら恐ろしい速さで目まぐるしくぐるぐるまわり、なかば号叫し、なかば咆哮し、かのナイヤガラの大瀑布《だいばくふ》が天に向ってあげる苦悶《くもん》の声さえかなわないような、すさまじい声を風に向ってあげているのだ。
 山はその根からうち震え、岩は揺れた。私はぴったりとひれ伏して、神経の激動のあまり少しば
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