はこんなことを言っているのです。『きっとあの樅《もみ》の木が今度、あの恐ろしい底へ跳びこんで見えなくなるだろうな』――ところが、オランダ商船の難破したのがそれを追い越して先に沈んでしまったので、がっかりしました。このような種類の推測を何べんもやり、そしてみんな間違ったあげく、この事実――私がかならず見込み違いをしたというその事実――が私にある一つながりの考えを思いつかせ、そのために手足はふたたびぶるぶる震え、心臓はもう一度どきんどきんと強く打ちました。
このように私の心を動かしたのは新たな恐怖ではなくて前よりもいっそう心を奮いたたせる希望[#「希望」に傍点]の光が射してきたことなのです。この希望は、一部分は過去の記憶から、また一部分は現在の観察から、生れてきたのでした。私は、モスケー・ストロムに呑みこまれ、それからまた投げ出されてロフォーデンの海岸に撒《ま》き散らされた、いろいろな漂流物を思い浮べました。そのなかの大部分のものは、実にひどく打ち砕かれていました、――刺《とげ》がいっぱいにつきたっているように見えるくらい、擦《す》りむかれてざらざらになっていました、――が私はまた、その
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