のことか、はっきりわかっていない。ポーの晩年の論文『ユウレカ』のなかには、「ヌビアの地理学者 Ptolemy Hephestion によって記述された暗黒の海[#「暗黒の海」に傍点]」云々《うんぬん》とあるが、これはポーの思い違いであるらしく、おそらくアレクサンドリアの天文地理学者 Claudius Ptolemy ではなかろうかと言われている。
(2)強風のときに船が海上で安全のため、帆を低く下げあるいは絞って、できるかぎり風の方へ船首を向け、ほとんど静止していること。
(3)chopping――強い潮流の方向と反対に風が吹くとき、あるいは二つの潮流が合するときなどに生ずるように、波が短く不規則に乱れたように立ち騒ぐこと。かりに「狂い波」と訳しておいた。
(4)〔Maelstro:m〕――ノルウェー北部の海岸にある有名な大旋渦《だいせんか》。モスケン(モスケー)・ストロムとも呼ばれる。原語読みならばメールシトルムとでも書くべきであるが、ここでは英語読みにした。前のノルドランド(ノルラン)以下の固有名詞も必ずしも原語読みにしたがわず、便宜上の読み方を用いた。島の名などは多く作者の創作にかかるものらしい。
(5)Jonas Rarmus(一六四九−一七一八)――ノルウェーの僧侶《そうりょ》。ノルウェーの地理および歴史に関する著述がある。
(6)ギリシャ神話の冥府《めいふ》にある燃ゆる炎の河。
(7)アイスランドの東南、スコットランドの北方の洋上にある諸島。
(8)Athanasius Kircher(一六〇一−八〇)――ドイツの数学、言語学、考古学の学者。
(9)バルチック海の北方の海。
(10[#「10」は縦中横])向い風のために帆がマストに吹きつけられること。
(11[#「11」は縦中横])できるだけ風の来る方に近く帆走し上がること。
(12[#「12」は縦中横])船首から船尾にいたるまですっかり平坦《へいたん》に張られた上甲板。通し甲板。
(13[#「13」は縦中横])ring−bolt――綱などを結びつけるために甲板に取り付けられた環《かん》のついた螺釘《ねじくぎ》。環釘。
(14[#「14」は縦中横])マホメット教徒の信ずるところによれば、現世から天国へ至るには蜘蛛《くも》の糸よりも細い橋を渡るのである。その橋を渡るときに罪ある者は地獄の深淵《しんえん》に落ちるという。
(15[#「15」は縦中横])アルキメデス“De Incidentibus in Fluido”第二巻を見よ。(原注)
[#ここで字下げ終わり]



底本:「黒猫・黄金虫」新潮文庫、新潮社
   1951(昭和26)年8月15日発行
   1995(平成7)年10月15日89刷改版
   2004(平成16)年2月5日100刷
※(1)〜(15[#「15」は縦中横])は訳注番号です。底本では、直前の文字の右横に、ルビのように小書きされています。また数字は縦中横になっています。
入力:kompass
校正:土屋隆
2005年11月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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