れいろう》な人柄になっていたらしい。
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尤、此は女出入りとは引離して考えられなければならない。花井お梅などは源之助のためにどうにもならない羽目に陥れられた女であり、その他にもいろいろそうした女出入りはあるけれども、そういう軽薄さというものは、昔の役者の集団式な性格なのだから、その点で源之助だけが所謂《いわゆる》棘《とげ》を負う、の訣もない。
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つまり彼は真女形《まおんながた》でなかったから、善人だったといえよう。
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歌舞妓芝居では世界とか時代とかいったものは、大きく分ければ四つになってしまう。王代物(入鹿や鎌足などの極、古い時代のもので、従ってその表すところの生活が宮廷に近いもの)・時代物(よろいかぶとの源平の時代を中心とした、それと同じ服装のもの)・お家物(現代ながら芝居の観客や役者たちの生活とかけ離れた大名などの生活を描いたもので、便宜上多少時代を離してはいる)・世話物(純粋の現代のもので、市井の生活に取材したもの、個々に分離した立場に於ける武士なども出て来るが、主として観客や役者の日常生活に最近い下町生活を描いた
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