の歌」か「恋歌」かの弁《わか》ちがつかなくなる。
一体、叙事詩時代から伝《つたは》つた情景纏綿の発想法は、短歌様式に特殊な気分をつけてゐるものである。其に力添へる者は、枕詞・序歌・懸け詞・縁語・本歌などである。新古今同人の最努めたのは「恋歌」であつたことは、疑ひがない。彼等の最洗練せられた技巧は、其部に見えてゐる。如何にして、語の陰を多く重ね、幻影を匂ひやかにすることが出来るか。どうすれば、気分効果を深め、愛執纏綿の情調を出す事が出来ようか。此が彼等の執意で、実感は顧ることなく、風情に重きを置いた。贈答以外の恋を題材にした、力こめた作物は、大抵閨怨である。俊成以来、短歌製作の為の源氏物語研究などが効果を表したのである。
女流作家の恋歌は、如何にあはれに、如何に世の常ならず焦るゝかを表さうとして、心理解剖に陥つてゐるが、尚自分に即《つ》けて歌うてゐる。併し、新古今の主流のものは、作者はすつかり離れてゐて、歌の上に物語の女の俤をうつし出さうとする、小説作家の態度である。さうした女の心境を外界の風物に絡みあはせて気分的に表さうとする。譬喩と言ふよりは、象徴に近づいたものもある。が、すべて言語
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