、よしあしの見さかひもつきかねる程になつてゐる。其中では「祭りは、献《マツ》りだ。政は献《マツ》り事《ゴト》だ」と強調して唱へられた、先師三矢重松博士の考へが、まづ、今までの最上位にあるものである。
まつる[#「まつる」に傍線]と言ふ語が正確に訣らないのは、古代人の考へ癖が呑みこめないからだと思ふ。神の代理者、即、御言実行者《ミコトモチ》の信仰が、まづ知られねばならぬ。にゝぎの命[#「にゝぎの命」に傍線]は、神考《カブロギ》・神妣《カブロミ》のみこともち[#「みこともち」に傍線]として、天の下に降られた。歴代の天子も、神考《カブロギ》・神妣《カブロミ》に対しては、にゝぎの命[#「にゝぎの命」に傍線]と同資格のみこともち[#「みこともち」に傍線]であつた。さうして、天子から行事を委任せられた人々は、皆みこともち[#「みこともち」に傍線]と称せられる。宰の字をみこともち[#「みこともち」に傍線]と訓むのは、其為である。
みこと[#「みこと」に傍線]とは神の発した咒詞又は命令である。みこと[#「みこと」に傍線]を唱へて、実効を挙げるのがもつ[#「もつ」に傍線]である。「伝達する」よりは重い。
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