後で、呪言及び叙事詩を唱へた。其は明らかに、ほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]の演出順序を示してゐる。ほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]は祓への呪言の後で、神聖な叙事詩を語つた。其後に、直会《ナホラヒ》の座で、新しい叙事詩か、古くして権威のなくなつた唯の歴史、古人の哀れでもあり、おもしろくもある伝承などを語り聞かせたであらう。其が、ほかひ人[#「ほかひ人」に傍線]から卜部へ、卜部から千秋万歳へ、千秋万歳は同時に唱門師曲舞でもあり、幸若舞でもあつた。新猿楽記を見ても、千秋万歳の酒《サカ》ほかひ[#「ほかひ」に傍線]と共に、琵琶法師も出てゐるから、夙く演芸化した盲僧もあつたのだ。盲僧が千秋万歳と同じ荒神祓へをして、屋敷を浄める様になる前に、ちやんと、演芸順序や其根本観念が融合してゐたのであつた。だから、琵琶弾きを傍証とし、唱門師を解剖して見ることは、比較研究法の上から、誤りではないのである。



底本:「折口信夫全集 3」中央公論社
   1995(平成7)年4月10日初版発行
※「昭和二年九月頃草稿」の記載が底本題名下にあり。
※底本では「訓点送り仮名」と注記されている文字は本文中に小書き右寄せになっています。
入力:高柳典子
校正:多羅尾伴内
2007年7月13日作成
青空文庫作成ファイル:
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