てのみつ[#「みつ」に傍線]を考へ、更に「つ」とも言ふ様になつたのである。だから、国造の禊ぎする出雲の「三津」、八十島祓へや御禊《ゴケイ》の行はれた難波の「御津《ミツ》」などがあるのだ。津《ツ》と言ふに適した地形であつても、必しもどこもかしこも、津とは称へない訣なのである。後にはみつ[#「みつ」に傍線]の第一音ばかりで、水を表して熟語を作る様になつた。
一一 天の羽衣
みづのをひも[#「みづのをひも」に傍線]は、禊ぎの聖水の中の行事を記念してゐる語である。瑞《ミヅ》といふ称へ言ではなかつた。此ひも[#「ひも」に傍線]は「あわ緒」など言ふに近い結び方をしたものではないか。
天の羽衣や、みづのをひも[#「みづのをひも」に傍線]は、湯・河に入る為につけ易へるものではなかつた。湯水の中でも、纏うたまゝ這入る風が固定して、湯に入る時につけ易へる事になつた。近代民間の湯具も、此である。其処に水の女が現れて、おのれのみ知る結び目をときほぐして、長い物忌みから解放するのである。即此と同時に神としての自在な資格を得る事になる。後には、健康の為の呪術となつた。が、最古くは、神の資格を得る為の
前へ
次へ
全48ページ中35ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング