親愛の意味で、さゝやかなでりけいと[#「でりけいと」に傍線]な感じを以て接する時の言葉で、かならずしも小くなくても宜いのである。沖縄では、この熟語法が直ぐ眼につく。かうした文法組織が沖縄には幾らもあつて、おもろ[#「おもろ」に傍線]以来の文献にも、方言にも残つて居る。ぐゎぁ[#「ぐゎぁ」に傍線]の古形は、がま[#「がま」に傍線]である。母及び妣の国を懐しんで「母《アモ》がま」と言つたのが、「あんがまあ」となつてゐる。宮廷女官の称号であつた「あむしられ」は「知られ母《アモ》」と言ふ義である。「きんまもん」なる霊神は、「真物|君父《キミ》」の義に過ぎない。かうした事は、更に台湾にもある。台湾人の言葉と言つても、蕃族調査報告書などに依つて見るだけでも、生蕃・熟蕃の言葉を整理して見ると、言葉は固より文法組織は部落々々に依つて違つて居る。うらるあるたい[#「うらるあるたい」に傍線]型の組織の幾分を持つた処もあるが、多く所謂南洋系の構成法を持つたのが普通である。最後が述語で終ると言ふ形とは全く異り、英語の様な形式を持つものもある。従来の言語学者は、語序を以て同語族を組立てゝ行くのであるが、其は、殆
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