根から屈折を生じて出来たものである。いく[#「いく」に傍線]は生活する或は呼吸する意味に考へて居るが、語根の場合にはいく[#「いく」に傍線]弓・いく[#「いく」に傍線]矢など言うて、威力を持つてゐる意味である。形容詞になるといかし[#「いかし」に傍線]など言ふ形を持つて居る。さうなる語根の屈折の状態が、第二義の熟語の場合から動詞を作つて来る場合をも、宿命的に支配して居る。単純な熟語ではないのである。所謂動詞といふ形が、一度単純から複雑な形になつて行かなければならないので、みのる[#「みのる」に傍線]と言ふ形も余程進まねば出て来ないのである。
ウ列の語尾の意味は、必まう少し意義のある完全な言葉が壊されてなつた、即、体言から動詞に屈折して来る習慣から出来たもので、古い意義の具つた言葉が破壊されて固定したものと思ふ。さう言うてしまへば、稍《やや》語弊がある。うくすつぬ[#「うくすつぬ」に傍点]はウ列の終止形であるが、終止形は一番後れて出て来るのである。形容詞で見ると、其がよく訣る。どうしても、終止形から始つて居るものとは考へられぬ。連用形・連体形が先づ出来て、其から終止形が具つて来た傾向があ
前へ 次へ
全31ページ中24ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング