線]共に生きて居る。二つの言葉が結ばれて一つの言葉になつて居るが、別々にも生きてゐるのである。思ひごと[#「思ひごと」に傍線]・ゆきあし[#「ゆきあし」に傍線]なども同じである。而も亦、熟語なることに疑ひはない。ごく簡単な熟語法である。
このイ列に変つて行くもの以外の熟語法では、昔は普通の連用形のイ列からつかずに、連体形からつく熟語の方が多かつた。連体形から来る熟語は、熟語の感じが不完全だと感じよう。例へば、もゆる[#「もゆる」に傍線]火・いづる[#「いづる」に傍線]湯などは、熟語と認めにくいであらう。形は熟語ではあるが、ぴつたり体言の感じが来ない。併し、実は昔は此形が多いのである。文献時代は、此連用形と連体形の熟語が戦つてゐる時期であつて、イ列から連体形ウを伴うた熟語法の方が、実は古かつたことが考へられる。此も先に言うた、ウ列から主部に続いて行く形になつて来る。ところが、此ウ列から主部に続いて来ると言ふ意識が段々変化して来る。此が用言の終止形と連体形の出来た原因で、第四変化は熟語を作るところから出来て来た。此点は、日本の用言の活用の発生には大事なことであつて、連体形から出た熟語いづる
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