る。併し、毛のか[#「か」に傍線]は上にあつて修飾する場合は訣るが、下にある場合に何故か[#「か」に傍線]になるのか。白毛の髪の意味であるから、此下にまう一つ熟語の主部がなければならない筈である。親はおゆ[#「おゆ」に傍線](老)から出たものに違ひなく、動詞のおゆ[#「おゆ」に傍線]か、動詞以前の語根おゆ[#「おゆ」に傍線]とでも言ふやうな言葉から出て居ると思ふ。「老いびと」とでも言ふ言葉が、下に予期出来るのである。ひと[#「ひと」に傍線]と言はなくても、これを暗示してゐるのである。其が、さう言ふ語を引き離しても理会がゆく様になつたもので、其が屈折したのである。おゆ[#「おゆ」に傍線]は年よつて居る、年長だ、と言ふことに過ぎぬ。年長者が家を切り廻して居るのであるから、古代に於いては、主に女性で、古代のおや[#「おや」に傍線]は母権時代にあつてははゝ[#「はゝ」に傍線]である。後には男を言ふことになつた。昔ははゝ[#「はゝ」に傍線]を祖と書いてゐる。祖の字は祖先の場合に宛てる事もあるが、多く母親の意味である。御祖神も其処に意義がある。
縄は、元、なふ[#「なふ」に傍線]と言ふ言葉から出た
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