っちゃ」に傍線]引っぱった。ひっぱったら切れた。切れたら、つないだ。
[#ここで字下げ終わり]
へんば[#「へんば」に傍線]は少し下卑た言ひ方である。ひきずりみっちゃ[#「ひきずりみっちゃ」に傍線]は、痘痕《アナ》の続いてゐる旁若無人なあばた[#「あばた」に傍線]面を言ふ。獰猛な顔つきは、子どもの憎悪を唆ると見えて「みっちゃ/\」の唄なども、其では慊《あきた》らぬか「ど、ど(又「ど※[#小書き平仮名ん、129−15]ど」)みっちゃ……」と憎さげに言ひかへる事もある。跛足《チンバ》を罵る時にも、同様「ち※[#小書き平仮名ん、129−16]ば/\。どち※[#小書き平仮名ん、129−16]ば」と謡ふ。
文句は確か、此ぎりの短いものであつた。其外か※[#小書き平仮名ん、129−17]ち[#「か※[#小書き平仮名ん、129−17]ち」に傍線](か清音)めくら[#「めくら」に傍線]などを嬲る文句も、あつた様だが忘れた。
下水道《スヰド》にはまるとか、糞を踏むとか、泥を握るとかした時は「びゞ※[#小書き平仮名ん、130−2]ちょ[#「びゞ※[#小書き平仮名ん、130−2]ちょ」に傍線]にさぁ(触《サハ》)ろまい。石・金踏んどこ(<で置かう)」又は「石・金持っとこ」と言ふ。びゞ※[#小書き平仮名ん、130−3]ちょ[#「びゞ※[#小書き平仮名ん、130−3]ちょ」に傍線]は穢れた人と言ふ意。かう謡ひながら、石なり、釘なり、雪駄の裏金なりを、道ばたで拾うて持つ。びゞ※[#小書き平仮名ん、130−4]ちょ[#「びゞ※[#小書き平仮名ん、130−4]ちょ」に傍線]と言はれた子は、やつきになつて、びゞ※[#小書き平仮名ん、130−5]ちょ[#「びゞ※[#小書き平仮名ん、130−5]ちょ」に傍線]をうつさ(伝染)うとする。石・金を持たぬ子は、びゞ※[#小書き平仮名ん、130−5]ちょ[#「びゞ※[#小書き平仮名ん、130−5]ちょ」に傍線]になつて了ふので、石・金を持つてゐる中は、穢れが移らぬのである。裏金のついた雪駄をはいた者は、どんな事があつても、びゞ※[#小書き平仮名ん、130−7]ちょ[#「びゞ※[#小書き平仮名ん、130−7]ちょ」に傍線]の仲間入りはせぬ。人なぶりから、遊戯に近くなつてゐる。
遊んでゐて、泣くと「泣きみそきみそ」と言ふ。喧嘩に負けたり、虐められた子供の親がおこりに
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