ずには居られなかったからである。
また一時《いっとき》、廬堂《いおりどう》を廻って、音するものもなかった。日は段々|闌《た》けて、小昼《こびる》の温《ぬく》みが、ほの暗い郎女の居処にも、ほっとりと感じられて来た。
寺の奴《やっこ》が、三四人先に立って、僧綱《そうごう》が五六人、其に、大勢の所化《しょけ》たちのとり捲《ま》いた一群れが、廬へ来た。
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これが、古《ふる》山田寺だ、と申します。
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勿体ぶった、しわがれ声が聞えて来た。
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そんな事は、どうでも――。まず、郎女さまを――。
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噛みつくようにあせって居る家長老《いえおとな》額田部子古《ぬかたべのこふる》のがなり[#「がなり」に傍点]声がした。
同時に、表戸は引き剥《は》がされ、其に隣った、幾つかの竪薦《たつごも》をひきちぎる音がした。
ずうと這い寄って来た身狭乳母《むさのちおも》は、郎女の前に居たけ[#「居たけ」に傍点]を聳《そびや》かして、掩《おお》いになった。外光の直射を防ぐ為と、一つは、男たちの前、殊には、庶民の目に、貴人《あてびと》の
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