《はばか》るがええ。宮から恐れ多いお召しがあってすら、ふつ[#「ふつ」に傍点]においらえを申しあげぬのも、それ故だとは考えつかぬげな。やくたい者。とっとと失せたがよい。そんな文とりついだ手を、率川《いざかわ》の一の瀬で浄めて来くさろう。罰《ばち》知らずが……。
[#ここで字下げ終わり]
こんな風に、わなり[#「わなり」に傍点]つけられた者は、併し、二人や三人ではなかった。横佩家《よこはきけ》の女部屋に住んだり、通うたりしている若人は、一人残らず一度は、経験したことだと謂《い》っても、うそ[#「うそ」に傍点]ではなかった。
だが、郎女は、ついに[#「ついに」に傍点]一度そんな事のあった様子も、知らされずに来た。
[#ここから1字下げ]
上つ方の郎女が、才《ざえ》をお習い遊ばすと言うことが御座りましょうか。それは近代《ちかつよ》、ずっと下《しも》ざまのおなご[#「おなご」に傍点]の致すことと承ります。父君がどう仰《おっしゃ》ろうとも、父御《ててご》様のお話は御一代。お家の習しは、神さまの御意趣《おむね》、とお思いつかわされませ。
[#ここで字下げ終わり]
氏の掟《おきて》の前には、氏上《う
前へ
次へ
全159ページ中84ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング