ぱっと開いている。仄暗《ほのぐら》い蕋《しべ》の処に、むらむらと雲のように、動くものがある。黄金の蕋をふりわける。其は黄金の髪である。髪の中から匂い出た荘厳な顔。閉じた目が、憂いを持って、見おろして居る。ああ肩・胸・顕《あら》わな肌。――冷え冷えとした白い肌。おお おいとおしい。
郎女は、自身の声に、目が覚めた。夢から続いて、口は尚夢のように、語を逐《お》うて居た。
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おいとおしい。お寒かろうに――。
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十六
山の躑躅の色は、様々ある。一つ色のものだけが、一時に咲き出して、一時に萎《しぼ》む。そうして、凡一月は、後から後から替った色のが匂い出て、禿《は》げた岩も、一冬のうら枯れをとり返さぬ柴木山《しばきやま》も、若夏の青雲の下に、はでなかざしをつける。其間に、藤の短い花房が、白く又紫に垂れて、老い木の幹の高さを、せつなく、寂しく見せる。下草に交って、馬酔木《あしび》が雪のように咲いても、花めいた心を、誰に起させることもなしに、過ぎるのがあわれである。
もう此頃になると、山は厭《いと》わしいほど緑に埋れ、谷は深々と、繁りに隠されてし
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