ても、あの人の来て居るのを知つて、表に立たして置かれようか、と言ふ処女なる神人の心持ちを出した民謡である。後のは、亭主を外へ出してやつて、女房一人、神人としての役をとり行うて居る此家の戸を、つき動かすのは誰だ。さては、忍び男だな、と言ふ位の意味である。
神社が祭りを専門に行ふ処と言ふ風になつて、家々の祭りが段々行はれなくなると、家の処女や、主婦が巫女としての為事を忘れて了ふ様になる。其でも徳川の末までは、一時《イツトキ》上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]などゝ言つて、女の神人を、祭りの為に、臨時に民家から択び出す様な風が、方々にあつた事を思へば、神来つて、家々を訪問する夜には、所謂「女の家」が実現せられたのであつた。
沖縄でも、地方々々の祭りの日に、家族は海岸などに出て、女だけが残つて、神に仕へる風が可なり多い。
底本:「折口信夫全集 2」中央公論社
1995(平成7)年3月10日初版発行
底本の親本:「古代研究 民俗学篇第一」大岡山書店
1929(昭和4)年4月10日発行
初出:「女性改造 第三巻第九号」
1924(大正13年)年9
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