[#「あるじ」に傍線]と言ふのは原義ではない。あるじする人[#「あるじする人」に傍線]なるが故に言ふのである。あるじ[#「あるじ」に傍線]とは、饗應の事である。まれびと[#「まれびと」に傍線]を迎へて、あるじ[#「あるじ」に傍線]するから轉じて、主客を表す名詞の生じたのもおもしろい。此に暫く、あるじ[#「あるじ」に傍線]側の説明をして置く必要を感じる。
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たまだれの小甕《ヲガメ》を中に据ゑて、あるじ[#「あるじ」に傍線]はもや。さかなまぎに、さかなとりに、小淘綾《コヨロギ》の磯のわかめ刈り上げに(風俗)
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此等になると、あるじ[#「あるじ」に傍線]云々は、主人はと物色する心持ちか、馳走は何と待つ心か、兩樣にはたらく樣で、平安朝末までもあるじ[#「あるじ」に傍線]の用語例は動搖し、漸くあるじぶり[#「あるじぶり」に傍線]など言ふ風の傾きを生じかけて居る。我が國の記録には、第一義のまれびと[#「まれびと」に傍線]に關しては、敍述が乏しくして、痕跡の窺はれるものがあるに過ぎないが、此方面からでなくては説けない史實が多くある。
藤原氏の氏[#(ノ)
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