にも、聴覚情調を重んじて居るところは、すでに象徴風を帯びた歌というてよからう。
此歌は要するに、家隆卿の「たが夕ぐれとたのむ秋風」の歌と互に裏書をしあうて居るものと見てよい。

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読者のある部分の人に断つておく。自分の目的とするところは、出来るだけ内容を完全にあらはしたいと思ふので、一字一句も忽諸にせないつもりであるから、時としては音脚を分解し、音質を検する如きこともあつて、自然一首の歌の数十倍の言語を費すこともあるであらうが、真に歌を知らうとする人を目的とするのであるから、そのつもりで居てほしい。実用的に訓詁のみにて足れりとする人は何も読んで貰ふ必要はないのである。要するに真の読者を待つに外ならぬ。
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底本:「折口信夫全集 12」中央公論社
   1996(平成8)年3月25日初版発行
初出:「わか竹 第三巻第四号」
   1910(明治43)年4月
※底本の題名の下に書かれている「明治四十三年四月「わか竹」第三巻第四号」はファイル末の「初出」欄に移しました
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2008年7月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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