代に入つては、うたての・うたてな・うたていなどが出た。さうして今も方言では、うたてい[#「うたてい」に傍点]として残り、煩雑・困惑・倦怠などの情調を表す語として用ゐられる地方が、相応にある。
「うたて+……」と謂つた形の句が、うたて[#「うたて」に傍線]だけを残した脱落句となる前に、うたて[#「うたて」に傍線]が既に叙述性能を持つて来てゐるのだ。さうして、副詞である為に、其位置は自由であるが、ともかくも不整形叙述語としての力だけは持つてゐた。さうして尚も、其自身不整備形なることを忘れないでゐる為に、あり[#「あり」に傍線]を補ふことによつて、語形を完成しようとしたのである。だがさうしても、うたて[#「うたて」に傍線]を様式上形容動詞風にして、叙述部感を完うしようとしたゞけである。此は、後に説く「あさまし」その他の場合にもくり返されることである。
底本:「折口信夫全集 12」中央公論社
1996(平成8)年3月25日初版発行
※題名の下に「昭和九年以降草稿」の表記あり。
※底本の題名の下に書かれている「昭和九年以降草稿」はファイル末の注記欄に移しました。
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2009年4月11日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全8ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング