の考へに移つたのは、大部分陰陽家の職神・仏家の護法天童・護法童子の思想の助勢がある様である。役霊・護法の活動は、使役者には都合はよいが、他人には迷惑を与へる事が多い。使役者の嫉妬・邪視が役霊の活動を促す。護法童子に名をつけたのが、乙護法である。伝教大師にも、性空上人にも、同名の護法があつた。性空から其甥比叡の皇慶に移つたのを乙若とも言うて居る。三井寺の尼護法は鬼子母神ともなつて居る。女の護法神だから言ふのだが、或は「乙」と同じく、其名であつたのかも知れぬ。若の名の「愛」と言ふのも、護法の名で、護或は若は其護法なることを示してゐると考へられぬでもない。愛護[#(ノ)]若を護法童子の変形とすれば、桃・麻の呪ひの意味は、徹底する様である。
此呪ひを志田義秀氏は叡山の不実柿《ミナラガキ》と関係あるものと観察して居られるやうだ。皇慶|甫《はじ》めて叡山に登つた時、水飲《ミヅノミ》・不実柿《ミナラガキ》などの地で「実のなるのにみなら柿とは如何。湯を呑むのに水飲とは如何」と言ふませた、併し子供らしいへりくつ[#「へりくつ」に傍線]問答を試みた、と言ふ話のある地で、皇慶の呪ひによつて、不実柿になつたと
前へ
次へ
全35ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング