刈り上げの折のまつり」と言ふだけの事で、今の秋祭りに対しては、稍自由である。そして、こゝのまつり[#「まつり」に傍線]と言ふ語も、唯の祭典の義ではないらしい。
祭りの用語例は、二つあげたが、此は亦違つて、献上するの義である。たてまつる[#「たてまつる」に傍線]・おきまつる[#「おきまつる」に傍線](奠)などのまつる[#「まつる」に傍線]で、神・霊に食物・着物其他をさしあげる事を表してゐる。先師三矢重松博士は、此「献《マツ》る」を「祭る」の語原とする説を強められた。まづ今までゞのまつり[#「まつり」に傍線]の語原論では、最上位のものである。師説を牾《モド》く様で、気術ないが、私はも少し先がある、と考へてゐる。

     三

新嘗の意味の秋祭りの外に、秋に多い信仰行事は、相撲であり、水神祭りであり、魂祭りである。秋の初めから、九月の末に祭りを行ふ様な処までも、社々で、童相撲・若衆相撲などを催す。それは、宮廷の相撲|節会《セチヱ》が七月だから、其を民間で模倣したと言ふことも出来ぬ。此を農村どうしの年占或は、作物競争と見る人もあらう。だが其よりも、不思議に、水神に関係してゐる事である。野見
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