に身も心も萎《な》えきったように、力なく夜着の上に両手をだらりとのせてよく眠っているようだった。そっと枕元まで忍び寄った芳夫は斧を振りあげた。また、はげしい雨が雨戸を横なぐりに過ぎた。激しい、絹をさくような声とともに次の間から走りだした君子は、未亡人のそばに膝をついた。未亡人は梅のようなかたちの痣のある左の胸を露《あら》わして、細く開いた目にいっぱいの涙をためていた。
底本:「怪奇探偵小説集3[#「3」は黒丸3、1−12−3]」ハルキ文庫、角川春樹事務所
1998(平成10)年7月18日第1刷発行
底本の親本:「怪奇探偵小説集 続々」双葉社
1976(昭和51)年10月
初出:「ぷろふいる」
1937(昭和12)年1月号
入力:鈴木厚司
校正:山本弘子
2008年1月26日作成
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